寒い季節にぴったりの「かにすき」と「かにちり」。どちらもかにの旨味を存分に楽しめるかに鍋料理です。
「かにすき」の由来は、大阪の有名な「かに料理専門店 かに道楽」が広めた名称です。大阪名物「うどんすき」の「すき」をとって「かにすき」と名付けられたそうです。
また、「かにちり」の由来は、かにを熱いだしにさっとくぐらせると、身が「ちりちり」と縮むことからこの名前がついたといわれています。
日本料理職人が、美味しいかに鍋(かにすき、かにちり)、蟹出汁、タレ、具材の作り方・レシピ、食べ方について詳しく紹介します。
「かにすき」と「かにちり」の違い
「かにすき」と「かにちり」 どちらも蟹を使った鍋料理ですが、名前の由来や特徴に違いがあります。
「かにすき」は、関西を中心に用いられる名称で、醤油やだしの効いた割り下でかにや野菜を煮込む、しっかりとした味付けが特徴です。「すき焼き」のように煮ながら味を染み込ませ、かにの旨味がだしに溶け込み、具材全体に深い味わいを与えます。
一方、「かにちり」は、福井県が発祥とされる「ちり鍋」や「ちり蒸し」に由来しており、昆布だしなどのあっさりとした汁で蟹を煮ることが基本です。シンプルな味付けのため、蟹本来の風味が引き立ちます。
また、鍋の締め方にも違いがあります。「かにすき」は、割り下の旨味を活かしてうどんを入れるのが定番で、甘辛いスープが絡んだうどんは絶品です。「かにちり」の場合は、蟹のだしが染み込んだ汁で雑炊を作ることが一般的で、優しい味わいが最後まで楽しめます。
かに鍋(かにすき、かにちり)に合う蟹は?
鍋料理では蟹の甘みがスープ全体に溶け出すため、身が甘く繊細な味わいを持つズワイガニやタラバガニはその代表格です。
かにすきにズワイガニが合う理由
かにすきは、甘辛い割下で煮る鍋料理であり、蟹の旨みが濃厚な出汁として全体に広がるのが特徴です。
ズワイガニは、甘みがありながらも上品な風味を持ち、割下の甘辛い味付けとよく調和します。また、殻からも豊かな旨みが出るため、煮込むほどに出汁の味わいが深まり、具材にもその旨みが染み込みます。
ズワイガニの身は繊細でふんわりとした食感があり、程よく煮込むことで割下の味を吸収しながらも、蟹本来の甘みをしっかりと感じられます。
かにちりにズワイガニが合う理由
かにちりは、昆布出汁のシンプルな味付けで蟹の旨みを最大限に生かす鍋料理です。そのため、蟹本来の甘みと上品な風味を持つズワイガニが最も適しています。
昆布出汁にズワイガニを入れることで、蟹の殻から染み出す旨みが出汁に溶け込み、鍋全体の味が格段に深まります。
また、ズワイガニの身は繊細で柔らかく、シンプルな味付けの鍋でもしっかりとその美味しさを感じることができます。
さらに、ポン酢ともみじおろし、刻みねぎを添えて食べることで、ズワイガニの甘みと爽やかな酸味が絶妙なバランスとなり、さっぱりと楽しめます。
かにすきにタラバガニが合う理由
タラバガニの身は弾力があり、火を通しても煮崩れしにくいため、かにすきの割り下でも淡白なタラバガニの身に程よい旨味が染み込み、その食感が損なわれません。
甘辛い味付けの中でも、タラバガニの旨味が引き立ちます。
かにちりにタラバガニが合う理由
出汁に溶け出す旨味は控えめですが、ポン酢やもみじおろし、薬味と合わせることで、さっぱりとした味わいを楽しめ、味のバランスも整います。
火を通しても身が締まりすぎず、プリプリとした食感がしっかりと残るため、噛むたびに満足感のある食べごたえを感じられます。
毛ガニ
毛ガニの身は濃厚で甘みがあり、かにすきよりもかにちりにすると、出汁にコクが出て、より一層美味しくなります。
ただ、毛ガニは濃厚で甘みのあるカニ味噌が魅力の蟹ですが、身が少なく、殻の割合が多いため、鍋にすると食べごたえが感じにくいデメリットがあります。
さらに、身の甘みや旨味が繊細で、かにすきの甘辛い割り下の強い味に埋もれやすく、カニ本来の風味を感じにくく、加えて、毛ガニの身はズワイガニやタラバガニよりも柔らかいため、煮込むことで食感が崩れやすい点も、かにすきに向かないです。
かに鍋(かにすき、かにちり)に合わない蟹は?
かに鍋(かにすき、かにちり)に合わない蟹は、ワタリガニ、クリガニ、花咲ガニ、上海ガニです。
ワタリガニは、身が柔らかすぎるため、煮込むと崩れやすく、鍋料理に向いていません。
クリガニは可食部が少ないため、かにすき、かにちりなどのかに鍋に合いません。
花咲ガニは、ズワイガニや毛ガニが出汁にまろやかな甘みやコクを加えるのに対し、旨味が強すぎるため、昆布出汁とのバランスが崩れやすく、鍋全体の味が花咲ガニの風味に偏りやすくなるため鍋に向いていません。
上海ガニは、小型で可食部が少なく、味付けの濃い鍋には向きません。
かに鍋(かにすき、かにちり)に合うのは「活」「生」「ボイル」「冷凍」どれ?
- 活カニ:一番おすすめ
- 生冷凍カニ:良い選択肢
- ボイル済みカニ:旨味は減るが使える
- ボイル済みカニ(チルド・解凍):旨味が逃げやすいく、鮮度も落ちやすい
・活のカニ
活きた蟹は、調理中に新鮮な旨味と香りがスープに溶け出し、鍋全体の風味を格上げします。特に、かにちりのようなシンプルな鍋では最適です。
・生冷凍のカニ
活蟹ほどではありませんが、適切に処理された生の蟹は十分に旨味を引き出せます。かにすきのように他の具材と煮込む鍋にもよく合います。
・ボイル済みのカニ
ボイルされた蟹はそのまま食べるのに適しており、鍋にすると出汁の風味がやや控えめになります。
・ボイル済みチルドのカニ
チルドとは、カニを茹でた後、0~5℃程度で冷蔵保存されているものになります。
冷凍蟹は手に入りやすく、適切に解凍すれば美味しくいただけます。
冷凍していないので、解凍による水分流出がなく、身がふっくらとしていてジューシーです。
しかし、冷凍しない分、鮮度が落ちやすく、身がパサついたり、風味が落ちたりすることがあります。チルドされたカニは、賞味期限が冷凍より短く、基本的に購入後2日以内に食べるのが最適です。
かに鍋(かにすき、かにちり)に合う蟹の部位
「かにすき」や「かにちり」では、脚部と肩肉が特におすすめです。これらの部位は甘みと旨味が強く、鍋料理をより美味しく仕上げます。
甲羅や胴体を使えば、鍋全体の風味が引き立ちます。
見た目の華やかさをプラスしたい場合は、ハサミを飾りとして加えると良いでしょう。
・脚部(足)
脚肉は甘みが強く、出汁にも豊かな旨味を与えます。特に、ズワイガニやタラバガニの脚部は鍋料理の主役として最適です。
・肩肉
脚に繋がる部分で、繊維状の身が詰まっています。
肩肉は旨味が濃く、鍋の出汁に深い味わいをプラスします。身をほぐして使うことで、雑炊や締めの料理にも役立ちます。
・甲羅
蟹味噌や内子が楽しめる部位。
甲羅を鍋に加えると、蟹の香りとコクが一層引き立ちます。蟹味噌は鍋に溶かしても美味しく、濃厚な旨味を楽しめます。
・爪(ハサミの部分)
見た目が華やかで鍋の彩りを豊かにします。
爪(ハサミの部分)は飾りとして使用するのがおすすめです。
・胴体
左右の脚の間にある中心部分で、甲羅を除いた部分です。身が少なめで繊維が細かい部位。
出汁を取る際に役立つ部位です。胴体を鍋に入れることで、蟹の旨味を最大限に引き出すことができます。
かにすきの出汁の材料、作り方
【材料】(4人分)
水:1L
昆布:10g
酒:50ml
薄口醤油:30ml
みりん:30ml
塩:少々(味を調えるため)
【作り方】
1.昆布で一番出汁を取る
鍋に水を入れ、昆布を30分以上浸けて旨味を抽出します。
昆布は水の状態から入れるのが基本。浸け置くことで、昆布の旨味成分(グルタミン酸)がしっかり抽出されます。
30分浸けたら、弱火にしてじっくり加熱します。
急激に温度を上げると、えぐみの原因になり、昆布の旨味が十分に引き出せないため、10〜15分かけて沸騰直前(80~90℃)までゆっくり加熱することが重要です。
沸騰直前(80~90℃)で昆布を取り出します。
目安は、鍋のフチに小さな気泡が出始めたら取り出すようにします。
グツグツ煮ると、昆布のえぐみが出るので注意が必要です。
昆布は出汁のベースになりますので、高品質なものを選ぶようにします。
利尻昆布や真昆布など、旨味が豊富な種類を使うと良いでしょう。
2.調味料を加える
沸騰直前(80~90℃)で昆布を取り出した後、火にかけて温めた状態で酒、薄口醤油、みりんを加え、軽く煮立たせます。
この際、塩を少量加えて味を調えます。
蟹の風味を活かすため、醤油やみりんの量を控えめにし、素材の味を優先します。
※酒を加えて臭みを取ります。酒は蟹の臭みを和らげるだけでなく、旨味を引き立てる役割もあります。
3.出汁を完成させる
火を弱め、味を確認します。蟹や野菜を入れることを想定して、出汁の味は濃すぎず、あっさり仕上げるのがポイントです。
かにちりの出汁の材料、作り方
【材料】(4人分)
水:1L
昆布:10g(約10cm×10cmの大きさ)
【作り方】
1.鍋に水1Lと昆布を入れ、そのまま30分以上おく。
(昆布の旨味がじっくり水に溶け出します)
2.鍋に火をかけ弱火にする。10〜15分かけてゆっくり温める。
(強火にすると雑味が出るので、ゆっくり加熱)
3.沸騰直前に昆布を取り出す
(鍋のふちに小さな泡が出てきたら、昆布を取り出す)
これでベースの昆布出汁が完成します。
【ポイント】
かにちりはポン酢などのタレで味わうため、出汁に塩や調味料を加えず、昆布だけの旨味を活かします。
出汁のシンプルな味わいを楽しむため、利尻昆布や真昆布など、品質の高い昆布を使うのがおすすめです。
※強火で沸騰させると昆布の雑味が出てしまうため、弱火でゆっくり加熱することが重要です。沸騰前に昆布を取り出すことで、澄んだ出汁が得られ、かにちりに最適な味わいが生まれます。
【アレンジのヒント】
「かにちり」の出汁はシンプルであるため、必要に応じて柚子の皮や少量の酒を加えると香りが豊かになります。
かに鍋(かにすき、かにちり)の具材
【定番具材】
・蟹
ズワイガニ、タラバガニ、毛蟹などお好みの蟹。
・野菜・その他
鍋に加える具材としては、白菜、長ネギ、春菊、豆腐、しいたけ、えのき、しめじ、人参などの野菜やキノコ類が定番です。これらの具材は、カニの出汁を吸い込んで美味しさが増します。
また、くずきりやマロニーを入れると、鍋の旨味をたっぷり吸って食感のアクセントにもなります。「かにすき」の場合は、割下の味を活かすために焼き豆腐を加えることもあります。
【アレンジ具材】
1. 海鮮類
- 白身魚(タラ、スズキ、鯛)、 煮崩れしにくく、カニ出汁と相性が良い
- ハマグリ、アサリ、貝の旨味が加わりスープが濃厚になる
- エビ(ブラックタイガー、車エビ)、甘みが出て、華やかさが増す
- ホタテ貝柱、出汁が出て食感のアクセントになる
- イカ(スルメイカ、ヤリイカ)、短時間加熱で柔らかく、風味が良い
2. 肉類
- 鶏もも肉(かにすきに合い、出汁にコクがでる)
- 鶏つくね(生姜や柚子を加えると風味が良くなる)
- 豚バラ肉(かにすきの割下に合うが、脂が多め)
- 牛薄切り肉(すき焼き風のかにすきに)
海鮮類と肉類を組み合わせることは可能です。
特に、鶏肉や白身魚、貝類との相性が良く、脂の多い肉は少なめにすると、出汁の風味が引き立ちます。
【かにすきとの海鮮・肉類の組み合わせ】
- 白身魚(タラ、スズキ、鯛)
- エビ(ブラックタイガー、車エビ)
- 鶏もも肉 、つくね(生姜・柚子入り)
【かにちりとの海鮮・肉類の組み合わせ】
- 白身魚(タラ、スズキ、鯛)
- ハマグリ・アサリ
- エビ(ブラックタイガー、車エビ)、ホタテ貝柱
- 鶏もも肉
- 鶏つくね(生姜・柚子入り)
3. 餅巾着
具材や締めの一品として楽しめます。
4. 根菜類
大根やごぼうは、食感が良く、鍋にボリュームを出します。
【ポイント】
火の通りやすいものから順に入れることで、全ての具材を美味しく仕上げることができます。
かに鍋(かにすき、かにちり)のタレのレシピ、作り方
かにすきのアレンジたれ
甘辛醤油ダレ(すき焼き風)
材料
- 濃口醤油 … 50ml
- みりん … 50ml
- 砂糖 … 大さじ1
- 料理酒 … 50ml
- 出汁(昆布・カツオ節) … 100ml(パックだしでもOK)※
※出汁100mlを取るための適正割合
材料
水 … 150ml程度
昆布 … 2g(約4cm四方の昆布)
かつお節 … 4g(軽く一掴み)
作り方
1. 水150mlに昆布を入れ、30分以上浸ける
2. 弱火で加熱し、沸騰直前で昆布を取り出す
3. かつお節を入れ、火を止めて1~2分待つ
4. キッチンペーパーやザルでこし、100mlになるよう調整する
甘辛醤油ダレ(すき焼き風)作り方
- 材料を鍋に入れ、ひと煮立ちさせる。
- 火を止めて冷ます。
- 必要なら溶き卵につけて食べるとまろやかに。
「かにちり」のタレ
かにちりは、昆布出汁ベースのシンプルな味付けで蟹の甘みと旨みを引き出して食べる鍋料理ですので、タレは、さっぱり系がいいでしょう。
- 基本のポン酢ダレ(定番)
- 柚子胡椒ポン酢(ピリ辛アレンジ)
- ごまだれ(コクのあるタレ)
- 昆布塩ダレ(昆布だしが効いた旨味)
美味しいかに鍋(かにすき、かにちり)の作り方、味付けポイント
かにすきは、蟹の旨みを活かしながら、甘辛い割下で仕上げる鍋料理です。割下に蟹の旨みが溶け出し、具材に染み込むことで、濃厚で贅沢な味わいが楽しめます。
この料理の美味しさの決め手は、昆布出汁をベースにした割下のバランスです。薄口醤油、みりん、酒を加えることで、蟹の甘みを引き立てながら、全体の味を整えます。特に、酒とみりんのコクが蟹の旨みを一層引き立てるのがポイントです。
割下(4人分)
昆布出汁∶1000ml
薄口醤油∶30ml
酒∶50ml
みりん∶30ml
昆布出汁をベースに、薄口醤油、みりん、酒を加えることで、蟹の甘みを引き立てながら全体の味を整えます。特に、酒とみりんのコクが蟹の旨みを一層引き立てるのがポイントです。
かにちりは、昆布出汁をベースにしたシンプルな味付けで、蟹本来の甘みと旨みを最大限に引き出す鍋料理です。余計な調味料を加えず蟹の風味を活かしながら、ポン酢や薬味とともにさっぱりと楽しむのが特徴です。
かにすき(関西風の甘辛鍋)
作り方のポイント
水:1L
昆布:10g
酒:50ml
薄口醤油:30ml
みりん:30ml
塩:少々(味を調えるため)
出汁(割下)をしっかり作る
昆布をベースに、醤油・みりん・酒・砂糖で甘辛く味付けします。煮詰まりすぎると塩辛くなるので、水や出汁を足しながら調整する。
カニは最後に入れる
先に野菜や豆腐を煮込んで旨味を引き出し、カニは火を通しすぎるとパサつくので、最後に軽く煮る
濃い味には焼き豆腐やくずきりが相性
焼き豆腐は、割下の味がしっかり染み込んで美味しい。くずきりは、出汁を吸ってツルツル食感が楽しめます。
締めは雑炊 or うどんが絶品!
ご飯+溶き卵+刻みネギで雑炊を作ります。
うどんは、割下が甘めなので、うどんとよく絡みます。
かに鍋(かにすき、かにちり)の副菜、サイドメニュー
「かにすき」の副菜
大根おろしとじゃこのポン酢和え
白菜の浅漬け
酢の物
だし巻き卵(
里芋の煮っころがし
ほうれん草の胡麻和え
揚げ出し豆腐
「かにちり」の副菜
柚子風味のなます
かぶの浅漬け
冷やしトマトの塩昆布和え
カリカリじゃこと豆腐のサラダ
茄子の揚げびたし
茶碗蒸し
たたききゅうりの塩昆布和え
かに鍋(かにすき、かにちり)のの美味しい食べ方・締めの楽しみ方
「かにすき」の美味しい食べ方・締めの楽しみ方
- カニからでる出汁を邪魔しないように、スープは癖の強くないシンプルに昆布だしのものがおすすめです。
- カニは加熱しすぎると身が固くなってしまうので、本来のふっくらした食感が味わえなくなってしまいます。加熱のしすぎには注意しましょう。身がふっくらと膨らんだ時が食べ頃です。
- 鍋の最後には、蟹や野菜の旨味が溶け込んだ割り下を活かして、うどんを入れるのがおすすめです。甘辛いスープがうどんに絡み、絶品の締めとなります。
「かにちり」の美味しい食べ方
- 昆布でとったあっさりとした出汁を用意し、具材の投入をします。野菜を出汁に入れ、火が通ったら、蟹を加えて3~5分ほど煮込み、身が白くなったら食べ頃になります。
- ポン酢や薬味(もみじおろし、ねぎなど)を添えて、さっぱりといただきます。
- 鍋の最後には、蟹や野菜の旨味が溶け込んだ出汁で雑炊を作るのがおすすめです。ご飯を入れて煮立たせ、溶き卵を加えて半熟状に仕上げると、優しい味わいの雑炊が楽しめます。